今日はウスイロヒョウモンモドキ保全施設の補修ゼフィルスの森の今

2022年07月10日

ゼフィルスの森の今

 6月26日と7月3日、2週連続で、兵庫県北部にある三川山へ、調査に行った。その時の話である。

 兵庫県北部にある三川山は、ゼフィルスの名所である。種類数も個体数も多くて、特にヒサマツミドリシジミの季節には、採集する人も撮影する人もたくさん訪れる。僕がこの山へ初めて登ったのは、25年ぐらい前だったろうか。早朝、夏の湿気に包まれた登山道を、ゆっくりと歩いて行くと、突然、目の前にアイノミドリシジミが絡み合う。耳元をかすめると、「ブンッ」というような風切り音が聞こえた。

 

 道の脇に生える草本には、朝霧の細かな露が置いている。

 

 そんな場所だった三川山だが、今年登ってみて驚愕した。

 

 草や低木がないのだ。以前は、登山道から笹やススキをかき分けなくては、森の中には入れなかったのだが、登山道の脇にも、林床にも、草1本生えていないのである。森のはるか向こう側まで見通せる。尾根筋から谷底まで見通せる。わずかに見える緑色は、シダのようにシカが食べない植物ばかり。ブナやミズナラの幼木も1本も残っていない。これではクマも、身を隠す場所に困るだろう。最近、街中にクマが出没するニュースをよく聞くようになったが、もしかして、こうしたことが遠因になってはいないのだろうか。
三川山山頂直下の登山道(0701)草本なし
 登山道 道の脇にも斜面にも まったく草がない

アカタテハ(0626)
 渓谷を眺めるアカタテハ 一本の草もなく緑色に見えるのは鹿が食べないシダ類

三川山山頂(0701)谷底まで見通せる
 登山道から谷底までみとおせる

NTT林道(0626)
 森の向こう側まで透けて見える
三川山山頂(0701)柵内のみに草本が残る
 頂上では 柵に囲われた電波塔の敷地だけに草が残る

 

 ゼフィルスはまだ健在だ。山頂付近に陣取っていると、ヒサマツミドリシジミが次々にやってきて、テリトリーを争い、激しく絡み合いながら飛翔する。しかし、あれほど多かったヒメキマダラヒカゲの姿は、まったくない。それどころか、笹やススキに依存するヒカゲチョウ類、セセリチョウ類はまったくいない。春のシーズンに登山道を歩けば、かつては20頭や30頭は見られたギフチョウやスギタニルリシジミが、見られなくなったというのも、むべなるかなである。

 

 山頂でヒサマツミドリシジミを待っていると、ヒョウモンがやってくる。その多くはツマグロヒョウモンで、ミドリヒョウモンが少し。他にはキタキチョウとスジグロシロチョウが少し。ルリシジミはたくさんいたけれど。

ヒサマツミドリシジミ(0626)
 ヒサマツミドリシジミ

フジミドリシジミ(0626)
  フジミドリシジミ 採卵用にしたかったけれど逃がしてしまった

ウラクロシジミ(0626)
 ウラクロシジミ

 

 このままでは森の次世代は育たない。20年、30年後、僕はもうこの世にいないだろうけれど、ゼフィルスの森は生命をつないでいるのだろうか。重い気持ちを抱えながら、山を下った。



smallblue at 20:14│Comments(0)昆虫 

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